
【補助金活用セミナー番外編】IT製品の導入と補助金申請
Teams 活用支援センターです。
これまで2度開催しご好評をいただいておりました「中堅中小企業様向け補助金活用セミナー~国や自治体を活用してテレワークを進めよう!~」で講師を務めていただいた行政書士の宮野敦さんから実際の補助金申請の事例をご紹介いただきました。
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補助金を使って安くチラシ作成ソフトを導入したいラーメン店
あるラーメン店の経営者様から、チラシ作成ソフトを導入したいが、補助金を使って安くそのソフトを購入することは出来ないか?というご相談を頂き、直ぐにこの経営者様を訪ねました。
そこで私が伺ったのは、何故、チラシ作成ソフトを購入したいのか?の理由でした。すると、馴染みの事務機販売店からチラシ作成ソフトの提案を受けたそうです。かつ、補助金を使えば費用も抑えられるとの説明を受けたそうです。
確かにチラシを作成することによって、そうでない場合に比べてお店の認知度向上に繋がりますが、お話しを伺っていますと、パソコン操作にそれほど精通している様子ではありませんでしたが、経営者様は購入することはほぼ決めている様子でした。
私からご説明したことは、確かに補助金には、設備購入代金の一部を補助するという意味合いがありますが、単純に設備を購入する代金を負担するというだけの便利な補助金は存在しないことをご説明しました。
それだけではなんとも申し訳ないので、今回のケースで該当するであろうと思われる補助金、小規模事業者補助金をご紹介させて頂きました。
しかし、ご紹介した小規模事業者補助金といえども、すぐに補助金が入金されることはありません。それどころか補助金を申請してから実際に入金されるまでは、約3ヶ月ほど期間がかかってしまいます。何故なら、申請から入金までに国に提出しなければならない申請書等の書類があり、申請書を提出したのちに、国の採択(合否判定)を経た上で入金されるからです(事後入金)。
この経営者様は、購入前に補助金が出て、その補助金に不足分の現金を足してチラシ作成ソフトが購入できると思っていたため、ご説明を聞かれた直後は非常に残念に思われておりました。
ITシステム販売業者の補助金に対する理解度
今回の事務機販売店のようにITシステム販売業者は、自社の製品を売りたいがために、補助金を利用してはどうか?という提案をするケースが見られるのですが、そのような都合の良い補助金というのは存在しないということを念頭に置いてください。
さらに、小規模事業者補助金は、補助金申請時に提出する書類は、補助金そのものを申請する申請書の他に、経営計画書、補助事業計画書、貸借対照表、損益計算書も提出する必要があります。補助金の財源は税金で賄われている以上、それ相応の審査がどうしても必要となります。
事務機販売店からはあたかも直ぐに補助金が得られるかのような説明をされていたようで、経営者様は、必要となる書類の量に、あっけにとられていました。この事務機販売店の営業とは数年にわたり取引があるようで、チラシ作成ソフトを今更購入しないとは言いずらいとの事。そのような理由ですと、補助金そのものの本来の制度趣旨(事業の持続的発展のために必要となる経費を補助する)とはかけ離れたものとなってしまい、採択されるには困難な状況といえます。そして一番のネックは、経営計画書の提出でした。この経営計画書には、会社概要、顧客ニーズと市場の動向、自社や自社の提供する商品・サービスの強み、経営方針・目標と今後のプラン等を記入する必要があったためです。経営者様としては、残念ながら会社の経営理念でさえも念頭においていなかったのです。
補助金申請で重要なことは?
そこで私からは、チラシ作成ソフトを安く購入するためにどうするか?という観点ではなく、自社のラーメン店を今後、どうやって良くしていくのか?という観点でお話しさせて頂きました。
顧客ニーズと市場の動向、自社や自社の提供する商品・サービスの強みを記入するにあたっては、近隣の同業他社の店舗はどうなのか?自社はお客様からどのように思われているのか?自社は競合他社と比べてどの点が優れているのか?を経営者様と一緒に考えさせて頂きました。正直、この作業はかなり時間がかかり、チラシ作成ソフト購入の時期は延長せざるを得ない状況となりました。
しかしながら、経営者様とお話しを進めていくと、ご自身のラーメンにかける強い思いを伺うことができ、また、他社との差別化として店舗は気軽に入れる雰囲気づくりがされており、かつ、煮干しにこだわりがあるラーメンであるということが分かりました。そして、そのような経営者様の思いも認知されなければ将来のお客様に伝えることができませんから、ラーメン店の認知度拡大のためにはチラシを作成し、かつ経営者自らそのチラシを配布し、お客様に親しみを感じて頂くことが必要という結論に達し、そのためにはチラシ作成ソフトの導入は欠かせないものとして補助事業計画書も記載することが出来ました。
最後に
書類作成の過程の中で、ラーメン店のいくつかの無形の資産を文章として経営計画書に落とし込みをしていきました。今まで頭の中でなんとなくぼんやりと思っていたことが言語化されていく様子をご覧頂き、そして実際に紙に書くことで気づくこともあり、創業当時の原点に立ち戻って考えて頂く事ができました。最終的には、たとえ補助金そのものをもらえなかったとしても、記入するまでの今回の過程が今後に繋がると言って頂けるようになりました。
結果は無事に採択されました。今回作成した経営計画書は、引き続き、銀行へ融資の相談をする際にも使用することができ、資金繰りの面からも役に立てるものを作成することができました。
これほどまでに長い補助金申請作業ですが、時間をかけた以上の成果を上げることが出来ました。このラーメン店の持続的発展を願っております。